15.01.17
[きのこ]
えのきたけ「農工研IQ2」の栽培特性について
えのきたけ種菌を「農工研G6」に変更して3年が経過しました。概ね順調ですが、若干の収量低下等も見られ、新品種のモニター栽培にも取り組む必要があります。
「農工研IQ2」の特徴
昨年より一部産地で導入され、傘の丸み、収量アップ等が評価されていますが、栽培施設の制約等もあり小規模生産者では作りにくい品種です。ワンルーム栽培、3部屋方式では比較的管理しやすいですが、2部屋方式での栽培は状況を見極めた細かな管理が必要となります。
1、培養について
培養時の高温耐性はG6ほど高く無く、臥龍5号と同等程度です。培養時はビン内最高温度を20℃以下にしてください。
2、生育管理について
芽出し時の菌床剥離が多く、初期伸長もやや遅めの為、G6より1日長い11日が芽出し完了の目安となります。温度、湿度設定等は変わりませんが、剥離軽減の為に菌かき後4日からのLED照射が必要です。
抑制移動は柄の長さが10mm以上を目安としますが、従来のような抑制をしてはいけません。有効茎数を増やし、傘、柄の揃いを良くする為の最低限の抑制にとどめ、柔らかなきのこのままで紙巻きを行います。また、乾き防止の為にプラ製の巻紙も必須となります。
ビン口から3cmほどを目安に紙巻きを行います。抑制をほとんど行わずに柔らかい状態なので、紙巻き以降の管理で光、抑制風を使いながらしっかりしたきのこに仕上げます。光照射、送風ファンのついた移動式抑制機があれば最適です。固定棚栽培の場合でも、収穫前5日ほどから光照射できるようLED照明の設備が必要です。また、仕上げの段階で室温を5℃以下に下げる事が有効ですが、ワンルーム栽培、4〜3部屋方式での栽培に限られます。
生育終盤での抑制管理がされた「農工研IQ2」は傘の水切れの評価は高いですが、株全体としてみれば水持ちが良く、この事が収量アップの秘密でもあります。紙巻き前の軟弱なままで仕上げてしまうと、日持ちのしないきのこになってしまうので注意が必要です。
また、抑制〜生育管理で最も重要なのが炭酸ガス濃度を2,500〜3,000ppmに維持することです。生育初期の過抑制や過換気は傘数の減少を招き、傘の大きさが出荷規格に納まりません。
初期抑制をしない事、炭酸ガス濃度が高い事など品質維持とは相反する環境が必要なので、生育での光照射、送風管理などをきちんと行って高い品質を維持することが重要です。
(中信きのこ種菌センター 立川業務課長)